【健康コラム】タバコによる医療コストは140万人分の労働力喪失と同じレベル

タバコは体に悪いことは知られていますが、社会にとってどれくらいのダメージがあるのでしょうか? 今年、最新の研究によって、喫煙によるコストが報告されました。

なんと、労働者140万人分を失っているのと同じレベルのコストがかかっているそうです。

喫煙によるコストの報告

喫煙による健康のリスクや医療費等のコストは、これまでも各国で報告されてきていました。しかし世界的にみたときのコストについては報告されてきませんでした。

今回発表されたのは、アフリカ、アメリカ、東地中海、ヨーロッパ、東南アジア、アジア、西太平洋から152国 (世界中の喫煙者の97%を含む)を対象としたデータを分析して、全世界的にみたときの喫煙によるコストを算出したものです*1。

ここでのコストは、直接的なコスト(入院や治療)と間接的なコスト(死や障害による生産性の損失)を考慮して算出したというもの。

2012年の時点で喫煙による医療コストは1.4兆ドルにのぼり、世界の医療費の6%が喫煙関連に費やされているとのこと。このうちの約40%は発展途上国が負担しています。

論文の筆者は「喫煙は重い経済負担を世界全体に課していて、特にヨーロッパや北アメリカのような喫煙率が高い国にて顕著である」と述べています。さらに、2012年の時点で喫煙に関連する疾病は30~69歳の成人(労働世代)において、12%の死亡の原因となっていて、ヨーロッパとアメリカが最も高い割合であったと報告しています。因みに、これは労働世代を140万人失っていることに相当するそうです。

受動喫煙や無煙たばこは算出にあたって含めていないため、これらも考慮するとさらに医療費は高くなる可能性はあります。

日本の喫煙率は低い?高い?

平成27年の国民健康栄養調査によると*2、日本人の喫煙率は男性 30.1%、女性 7.9%で、この 10 年間で総数、男女とも有意に減少している状況です。WHOが出している統計では、2015年の時点のランキングでみると日本人の喫煙率は男女共に60位です*3。一見世界の中で喫煙率は低いように見えますが、下記の表をみると先進国の中で女性の喫煙率は低いものの、男性においては決して低くないことがわかります。

喫煙率
男性 女性
日本 30.1% 7.9%
アメリカ 19.5% 15.0%
カナダ 17.7% 12.2%
イギリス 19.9% 18.4%
イタリア 28.3% 19.7%
フランス 29.8% 25.6%

WHO, World Health Statistics 2016を基に作成

先進国の中では、喫煙対策が遅いと言われている日本ですが、生産性や医療費のコストの面から考えても喫煙によるリスクが高いことが徐々に報告されている中で、今後世界的にもますます禁煙の動きが注目されるかと思います。
 
 参考文献
*1 Mark Goodchild et al,. Global economic cost of smoking-attributable diseases. Tob Control 2017;0:1–7.
*2厚生労働省 平成27年の国民健康栄養調査
*3 WHO, World Health Statistics 2016を基に算出

執筆者プロフィール

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朴沢広子(ほうざわひろこ)
栄養士、慶應義塾大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修博士課程在籍、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。同大学健康マネジメント研究科修士課程修了後、女子栄養大学にて栄養士を取得。現在、中小企業の勤労者の健康状態、健康行動について研究している。忙しい毎日の中で実践できる、より楽しく、健康的な食事の提案に努めている。