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健康保険組合連合会(以下、健保連)は、企業の会社員が加入している健康保険組合全体の決算見込みを発表しました。令和5年度は、前年より収支が悪化し、1367億円の赤字となる見込みとのことです。
新型コロナ等の流行による給付増加と「団塊の世代」の後期高齢者移行が影響
保険料収入は前年度に比べて2,295億円増加したものの、収支が悪化。健康保険組合の半数以上が赤字となる見込みです。
収支悪化の要因として、新型コロナ等の呼吸器系疾患が流行したことで診療を受ける人が増え、保険給付費が前年度に続き増加したことが要因となっています。
また、団塊の世代と呼ばれる1940年代後期に生まれた人たちが75歳となり、通常の健康保険から後期高齢者医療保険へ移行。それにより保険組合が国へ拠出している後期高齢者支援金が大幅に増加したことも収支悪化に寄与しました。
さらに、薬剤の高額化などによる医療費の高額化も進んでおり、1か月の医療費が1,000万円以上となる件数が2,156件で過去最多になるなど、こちらも財政を圧迫する要因となっています。
現役世代の負担軽減に向けた高齢者負担の見直しを提言
健保連では、現役世代の負担軽減を今後の課題として、その改善策として前期・後期高齢者の窓口負担割合見直しなどを提言しています。
現行制度では、国民健康保険の医療費負担割合は、70歳未満までは3割負担、70歳~74歳は一般的な所得であれば2割負担、現役並み所得であれば3割負担になります。
また、75歳以上からは後期高齢者医療保険へと移行し、一般的な所得は1割、現役並み所得者は3割となります。
健保連の変更案では、70歳~74歳は3割負担、75歳~79歳の一般的な所得は2割負担へと引き上げるほか、75歳以上の現役並み所得者の範囲を拡大することで実質負担割合の引き上げを図ることを国に求めています。
<出典URL>
健康保険組合連合会「令和5年度 健康保険組合決算見込と今後の財政見通しについて(概要)」
健康保険組合連合会「5年度高額医療交付金交付事業における高額レセプト上位の概要」