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【マネーライティング講座】専門分野なら執筆経験がなくても書ける?

金融・経済・マネー関連の記事や原稿執筆の案件には、書き手の要件に金融機関での勤務経験やファイナンシャルプランナーの資格を課しているものがあります。応募要件にこうした条件を設けていない案件に比べ原稿料相場が高く、条件に該当する人には好案件にみえます。

しかし、それだけで仕事を取れると思うのは早計です。原稿料をもらって書く時に求められるのは、専門知識だけではないからです。

専門知識がある=執筆のプロではない

記事を書くときには、そのジャンルに精通していることが不可欠です。個人のブログやSNSと違って、情報を発信することで読者から購読料を取るメディアは、間違ったことを書くわけにいきません。記事自体は無料でも、PV数が高く大多数の人に読まれるメディアなら、発信する情報が社会に与える影響力が大きいですし、発信者としての信用にも関わります。

ですから、内容が正しいことは大前提です。

なぜ新聞や雑誌には記者やライターがいるのか?

ならば正しい内容を書くためには、その道の専門家が書けば間違いないはずです。しかし実際は、メディアの記事の多くは記者やライターが書いています。

たとえば新聞では、新しい学術論文が発表された際にそれを紹介する記事を見かけます。内容は学術論文の抜粋が中心ですが、論文と全く同じ文章が使われることはまれです。書いているのはその研究をしている研究者自らではなく、新聞の記者やライターです。

研究者が論文を「書き」、それを記者が記事に「書く」。同じ内容なのになぜわざわざ情報源を創りだした研究者ではなく、記者が記事を書くのか?

それは、読者に伝わるように書く技術に長けているためです。

いくら正確な内容であっても、難しければ読者には理解してもらえません。読みにくい文章では伝わりません。記者やライターの人は、情報源(この例では論文)を読み、ときに取材を重ねて記事を書きます。その際には、論文に書かれている数々の結果のうち、日常生活からイメージしやすい事例を選んだり、平易な言葉に置き換えたりします。そして、情報を一般の人にわかりやすい文章に加工して発信します。

つまり、学術雑誌など一部を除いて、メディアに載る文章は、もともとの情報や専門知識が広く一般に理解されやすい言葉に翻訳されたものなわけです。

専門分野の原稿を書くには専門家役とライター役が必要

こうしてみると、専門知識があることと、それを一般に向けて伝えることは全く意味が違うことがわかります。

すなわち一般の読者に向けたメディアで専門分野の記事を書くには、
1)そのジャンルの専門知識=専門家が持っている知識や見聞
2)読者にわかりやすく書く技術=記者・ライター・編集者が持っている技術
の2つが必要です。

ただ、2)読者にわかりやすく書く技術には、記者・ライター・編集者と3つの職種が含まれています。厳密にいえばこれらの職種の人が持っている技術はそれぞれ違います。

編集体制の整ったメディアなら社内に編集者を置いており、原稿を公開できる記事に仕上げる作業は編集者が担います。また、金融・経済・マネー系のメディアでは取材をもとに書く記事よりも、ウェブなど一般に公開されている情報をもとに書く記事が主流です。専門家の人が本業の傍らで書く記事の多くは、新聞や雑誌の記者のように取材をして書くことはありません。ですから専門分野の記事を書く時は、一人で専門家役とライター役を兼務するイメージに近いと思います。

ライターに資格はないが、素人でもできるわけではない

税理士、会計士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家になるには、資格が必要です。これに対して記事を書くためには特別な資格はいりません。このため、書きさえすれば誰でも記事を書けると思う人もいます。しかし多くの専門家には「難しいこと」「専門的なこと」の知識は十分にあるものの、それを「よりわかりやすく」「書く」技術がすなわち備わっているわけではありません。

特に、不特定多数の人が読んで理解できる文章を書くのは意外と難しく、ある程度の技術と訓練を要します。

はじめから完璧な原稿を書かねばならないわけではありません。専門知識を盛り込めるというアドバンテージがある分、専門家ではないライターと比べて文章力が劣っていたとしても、多少は許容されるかもしれません。ただ、完成度の低い文章をわかりやすく編集するのは非常に手間がかかります。文字数や内容にもよりますが、編集にはたいてい数時間を要します。本業のライターほどではなくとも、書き手自身の文章力が高ければ、それだけ編集者には喜ばれます。すなわち、次の仕事や報酬アップも近づきます。

専門知識はいわば英語と同じです。小学校から英語が必修になり、就職ではTOEICのスコアが求められる今、英語「だけ」で勝負できる仕事はほとんどありません。それと同じように、専門知識さえあればあとは問われない仕事もありません。

メディアで求められる記事は多数の読者に読まれることを想定していますから、あまり専門的すぎる内容よりは、一般の日常生活に直結した題材が好まれます。となると、同じ内容について知っている専門家はいくらでもいます。まして、マネー系のジャンルには税理士、会計士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー、金融機関にお勤めの方など、あらゆる専門家が多数います。よほど特化した強みがあれば別ですが、広く一般で求められるテーマで書くなら、専門性の高さよりも文章力が求められるはずです。

専門家向けの執筆案件というと、専門家ならできると思うかもしれません。しかし実はそれ以上に、執筆スキルの高さが大事です。

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【マネーライティング講座】なぜ私の文章は伝わらないのか?わかりやすい文章への誤解とは

「あなたの文章の意味がよくわからない」と言われたことはありませんか? 業務上の文書に限らず、メールやSNS、手紙を含めると、私たちが文章を書く機会はたくさんあります。コミュニケーションを取るために不可欠な手段ですが、ちょっとした行き違いで相手に誤解を与えてしまったり、話が想定外の方向に進んでしまったりすることも。ブログやSNSでは炎上を招くこともあります。

なぜ自分の文章はうまく伝わらないのか? その原因には、「どんな文章ならわかりやすいのか」について正しく理解できていない可能性が挙げられます。わかりやすい文章とは何かについて、考えてみましょう。

「わかりやすい文章=簡単な文章」ではない

わかりやすい文章というと、簡単な文章を書けばよいと思う人がいるかもしれません。確かに簡単な内容は、難しい内容よりは理解しやすいはずです。しかし簡単な内容であっても、相手に正しく伝わらないこともあります。

むしろ簡単な内容ほど、すぐわかるだろうという思い込みで雑に書いてしまい、誤解を招きやすいとも思います。わかりやすく書くとは、簡単に書くことではなく、相手に伝わるように書くことです。

伝わらないのは相手の読解力が低いからではない

自分が書いた文章を読んだ相手に「何をいっているのかわからない」と言われると、「なんでわかってくれないの?」と思うのではないでしょうか。また「この人は読解力がないに違いない」とも思うかもしれません。時間をかけて書いた文章なら、なおさらです。

しかし多くの場合は、自分の書いた文章の方に問題がある、と思うべきです。

私自身も、推敲に推敲を重ねた記事を読んだ人からそんなコメントが寄せられ、相手のせいだと思ってしまったことがあります。でもしばらくして冷静になって読み直してみると、確かにわかりにくい。もっと丁寧に言葉を補うべきだったと思いました。

誰しも、自分が書いた文章は自分の頭で考えたことをアウトプットしているので、自分ではわかります。ですが読む人は、書いたときの書き手の頭の中のことなど知りません。書き手の頭の中の前提条件を知らなければ、わからなくて当然です。

もし伝わらなければ、自分に責任がある。相手の読解力を求めるのではなく、自分が伝え方を工夫すべきである。そんな謙虚な姿勢で自分の文章を見直すことが、文章力を上げる最強の近道だと私は思います。

そして謙虚さを意識して書くと、確実に「伝わらない!」は減ります。

自分の価値観と世界観の中にこもった文章では伝わらない

謙虚さというと自分がへりくだることをイメージするかもしれません。確かに上から目線の文章よりは、へりくだった方が好感度の高い文章になります。しかしへりくだりすぎるのも問題です。自分を卑下しすぎた文章は読んでいて心地よくありません。

たとえば「説明させていただきます」「お示しさせていただきます」「おすすめさせていただきます」など、書き手が読者の下にいると過度に強調する表現が目立つと、読み手はそればかりに意識が向いてしまい内容に集中できません。謙遜と謙虚は違います。書き手が単にへりくだるのではなく、読み手の目線と同じ高さに立つことが大切です。

むしろ、読み手の価値観や世界観の中に入って語ろうとするスタンスが、文章を書くうえでの「謙虚さ」だと思います。もちろん、他人の価値観や世界観を完璧に理解することなどできませんし、多数の人に読まれる文章を書くなら、すべての人の価値観に合わせることなど不可能です。ですから実際に相手の価値観・世界観を理解しているかどうかというよりは、理解しようと努めているかが、伝わりやすさには重要な気がします。

不思議なもので、この「理解しようと努めている姿勢」は、文章によく現れます。相手を理解しようとしていない文章は常に自分本位です。自分(書き手)の知っていることは相手も知っている、自分が語る言葉は相手も理解して当然、という前提で語られるのです。そしてその思い込みこそが、伝わらない最大の原因です。

わかりやすい文章は徹底的に相手目線の文章である

文章がわかりにくいと、自分が伝えたいことを自分の意図通りに相手に伝えることができません。正しく伝わらないどころか、相手に誤解を招いてトラブルのもとになることもあります。

メールやSNSのダイレクトメッセージなど、1対1や、リアルで付き合いのある特定の人の間だけでのトラブルなら、誤解を解くのはそれほど大変ではありません。会いに行く、あるいは電話をして説明すれば、わかってもらえるでしょう。しかし不特定多数に発信するブログやSNSでは炎上につながることもあります。わかりにくい文章が、自分のイメージや社会的地位を揺るがす火種になることもあるのです。

ただ、炎上する文章こそ、文章力よりも自分本位な姿勢が命取りになるように思います。ときどき有名人のブログなどが炎上するとき、はじめの炎上のきっかけこそちょっとした言葉の使い方の誤りであっても、その後に発信する釈明や謝罪が火に油を注いでしまうことがあります。その多くで、自分の価値観・世界観の中だけで語る姿勢が批判の対象になっているように感じます。

全く相手に誤解を与えず、完璧な文章を書くことなどできません。指摘を受けることは誰にでもありえます。それを回避するには、文章の書き方のテクニックも重要ではあるものの、それ以上に相手の世界に歩み寄る姿勢が大切ではないでしょうか。

自分の価値観・世界観の壁を超えて、相手の世界に入っていく。そうして徹底的に相手目線を意識することで、より相手に理解される文章に近づくはずです。

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