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【マネーライティング講座】初心者ライター必見、マネー記事特有の書き方のポイント3つ

マネーライティングでライターデビューを目指す方の多くには、ファイナンシャル・プランナー(FP)の資格を持っているなど、金融経済の知識が豊富な方が多いでしょう。

専門的な知識や経験はライティングの強みになりますが、それだけではマネー記事を書くには不足することがあります。そこで、マネー系の記事を書くときに知っておきたい、原稿の書き方やルールを解説します。

専門的で正確なのは大前提

マネー系の記事は、家計や節約、ライフプラン、住宅、保険や税金、資産運用や相続などさまざまなお金のことを扱っています。どの内容でも、FPや税理士、社会保険労務士の資格があるなどで十分に理解している人が書くことで、お金のことをよく知らない人や疑問を抱えている読者の役に立つ、価値のある記事になります。

ただ、記事として文章で発信する際には、正確性と専門性の他にも配慮すべきことがあります。 おもなポイントを3つ紹介します。

1.レベル感の設定

マネー記事とひとくちにいっても、難易度はさまざまです。掲載する雑誌、新聞、ウェブメディアが想定している読者の性別や年代はもちろん、その読者がマネーについてどれくらいの知識があるか? その想定に合わせて、文章の書き方や具体例の示し方を工夫しましょう。

専門用語はかみ砕く

専門家が執筆するときに陥りやすいのは、日常業務では当たり前のように使っている専門用語をそのまま使ってしまうことです。業界紙・業界誌なら問題ありませんが、一般消費者向けの記事、とりわけ初心者向けでは、専門用語はかみ砕くか、平易な言葉での説明を併記しましょう。業界の外にいる人になじみのない言葉を無意識に使っていないかは、第三者に確認するのも有効です。

ただ注意したいのは、初心者向けであってもむやみに説明を省いたり、上から目線で読者を見下したような印象を与える記述はしないことです。読者の「知りたい」という気持ちに寄り添って、知識を補う書き方が大切です。

2.レギュレーション

お金に関する情報は、読者の家計や人生のお金に影響を与える可能性があります。このため、誤解を招く表現は避ける配慮が必要です。 そこでマネー系の記事では「レギュレーション」といって、文章を書くときの表現や伝え方のルールが設定されていることがあります。

日常生活での会話や、対面のマネー相談などでは使ってもそれほど差し支えない表現のなかにも、文章としてメディアに掲載するのはNGとされるものがあります。

レギュレーションは各メディアが設定しており一概にはいえませんが、おもに次のようなルールを設けているのが一般的です。

×安易な断定表現

読者によってさまざまなケースがあることに配慮せず、一方的に安易に断定してしまう表現はNGです。たとえば、「この株式を買えば絶対に儲かります」「この保険が一番安いです」のような表現です。

ほかに、次のような表記はできるだけ避けましょう。

避けた方が良い・NGな断定表現の例

 絶対、お得、最安、唯一、1番、すべて、必ずもらえる、いい商品、悪い商品  ・・・など

×安易な比較表現

具体的な商品やサービスについて触れる場合には、その比較も慎重にします。どちらが優れているか、安いかなどの結果は、比較する前提によって変わることがあるためです。前提を設定する場合も、正しく適切に条件設定できているかを入念に確認しましょう。

たとえば次のような表記は慎重にしましょう。

避けた方が良い・NGな断定表現の例

 Aの方がBよりもお得、損、安い、高い、優れている、劣っている ・・・など

×特定商品の推奨・批判

マネー系の記事では、預金やローン、保険や資産運用の商品やサービスについて触れることがあります。特段の指定がない場合には、記事の中で特定の商品だけを独断で推奨したり、批判したりするのは避けた方が無難です。一歩間違うと、炎上やトラブルの元にもなりかねません。

記事によっては、わかりやすく説明するために具体例として個別の商品やサービスに触れた方がよいケースもあります。その場合は入念に内容を確認し、正確に紹介するようにします。

どうしても個別の商品を推奨・批判したい場合には、その根拠をしっかりと調査し、読んだ人が納得できる説得力のある記述を心がけましょう。

推奨する場合には、それが本当にその商品やサービス独自の特徴なのか、他社の商品に類似のものはないのかを十分に調査します。

批判をする場合は特に注意が必要です。ある商品のデメリットは、一見すると弱点に見えても、他の観点から見ればメリットといえることもあります。他社商品に比べて本当に批判されるべきなのか、慎重に検証してから書きましょう。

案件によっては、特定の商品・サービスをPRするための記事や、複数の商品を比較検証するために、メリット・デメリットを書くことを求められる場合もあります。その場合にも、どのような表現や書き方が望ましいか、クライアントと十分相談するとトラブルを防ぎやすいです。

気をつけたい推奨・批判表現の例

 (十分な根拠なく)「A社の商品●●はおすすめ」、「B社の■■は買うべき」、「C社の▲▲サービスはここが悪い」 ・・・など

その他のNG表現

そのほか、宗教や政治に関する個人的な意見を主張するような表現、人権侵害に当たる表現、科学的根拠のない主張、うわさ、デマなどは、マネーライティング案件ではほとんど歓迎されません。

ただ、どこからがNGなのかの判断はメディアによって許容範囲が異なることがあります。時代とともに社会の価値観が変わり、以前はOKとされていた表現がのちにNGといわれるようになることもあります。

そのひとつに、男女の平等に関わる表現があります。たとえば最近は男女差別を想起させるという観点で「ご主人」「奥様」の表記がNGとされることがあります。

同じ理由で、文脈によっては次のような表現は避けるべき場合があります。

その他気をつけたい表現の例

 「奥様はご主人の扶養に入るもの」、「親の介護をするのは娘・嫁です」、「結婚したら子どもを産むはず」、「住宅ローンの名義人はご主人」 ・・・など

(固定的な先入観によって記述される場合。個別の具体例の紹介では例外もあり)

ライティングの仕事で執筆した記事は、不特定多数の読者に読まれることになります。このため、読者にとって不快に感じられる恐れのある表現はNGとされることがあるのです。事前にレギュレーションを明示してもらえる案件では必ず熟読しておきましょう。

3.出典情報の明記

マネーライティングでは、金融経済に関する専門的な内容を扱いますが、専門家が書く場合であっても、 編集体制が整備されているメディアならば必ず内容の精査があります。そこで重要なのが出典情報です。

出典情報は、原稿を書くにあたって参考にした、引用した情報源のことです。信頼性の高い記事の多くは、出典情報を明記します。

そのジャンルに精通した人が書くなら、正しいことは大前提ですし、資格を持っている人ならわざわざ調べなくても当然知っている情報もあるでしょう。

しかし記事として発信する際には、どんなにその道の大家が言っていることでも、きちんと裏取りをすることが重要です。これを「ファクトチェック」といって、原稿の内容をメディア側の編集部が精査する際に、出典情報を求められます。原稿を書く際に確認した資料は、原稿提出時に一緒に提示するようにしましょう。多くの場合は、出典元のURLを記載しておきます。

出典情報を明記するのは、著作権のルールを遵守する意味もあります。出典元のウェブサイトには、引用などで使用する際にはその旨を明記するよう求めているところもあります。正しい情報を、正しい形で利用して記事を書いたことを示すためにも、出典情報を書くことが大切です。

すべては読者、そしてライター自身のため

ここで挙げたのは一部で、マネー系の記事を執筆する際に守りたいルールやテクニックはほかにもたくさんあります。

細かなことに気を遣いながら書くのは、キャリアを積んでいても正直いって骨が折れます。しかし、微に入り細に入りさまざまな配慮をしながら書くのは、その記事を読んで生活に活用してくださる読者ひとりひとりのためになる。そしてそれは、最終的には執筆したライター自身への信頼にもつながると信じています。

それが、ライティングの仕事へのやりがいだと感じています。

すべてを初心者のうちから網羅して書くのはとても難しいことですが、ライティングの経験を積みながら少しずつ習得していけると、ライティングの仕事がより楽しくなるはずです。

(文:マネーステップオフィス株式会社 加藤 梨里)

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【マネーライティング講座】マネー記事で必要なSEOテクニック

マネーライティングの案件の多くは、ウェブサイト向けです。原稿を書くときには、金融に関する知識や専門性が欠かせませんが、書いた原稿がウェブサイトに掲載されたときに、どうしたら読んでもらえるかを考えることも重要です。そこで必要なのが、SEOに関するテクニックです。

ウェブ記事の執筆でSEOの知識は必須

検索エンジン最適化(SEO,Search Engine Optimization)は、Googleなどインターネットの検索エンジンで上位に表示させるための施策です。ウェブに掲載する記事を制作するときには、公開した記事がいかに上位に表示されるかが期待されています。

SEOのテクニックを使うことは、情報を必要としている読者に、適切な情報にたどり着けるようにサポートしてあげる、記事を良質なものとして検索エンジンに認知してもらいやすくするなどの点でとても重要です。施策は、記事制作を発注するウェブメディア・クライアントの担当者が行うことがほとんどですが、良い記事を書けばSEOの成果につながりやすく、ライターとしての評価も上がります。

検索エンジンのアルゴリズムは常に進化しており、よりわかりやすく、より読者に寄り添った記事が上位に表示されやすくなってきています。このため、わかりやすく情報量が十分な良い記事であれば、それほどSEOに関するテクニックを意識せずに書いても、結果的に多くの人に閲覧される、つまりページビュー(PV数)が上がることもあります。

ただ、ネット上には星の数ほどの記事があります。マネー記事でも、たとえば「貯金」と検索すると5600万件以上もの記事がヒットします(2020年12月10日現在)。そのなかには、内容が優れた記事も数多いはず。検索結果に並ぶ多数の記事から、自分の記事を読んでもらうには、内容以外にも多少のしかけがあった方が有利でしょう。

ライティングのみの仕事を請け負うとき、SEOに関して専門的な技術は求められないことがほとんどです。しかしクライアントは記事を制作することではなく、記事を公開した後に読まれることを目的としています。ライターも、検索エンジンのしくみやクライアントが求めていることを適切に理解できるほうが、要望に沿う記事を作りやすくなります。その意味で、ライターにもある程度のSEO知識は必要です。

マネーライティングに必要なSEOテクニック3つ

では、マネー記事を執筆するときには、どのようなSEOテクニックがあればいいのでしょうか。SEOに関する施策はたくさんありますが、ライターとして記事制作にかかわる際には、次の3つは力を入れるとよいでしょう。

1.検索キーワードの探索

SEOで欠かせないのが検索キーワードです。たとえば「貯金」など、ウェブサイトを探している人が、検索エンジンの検索窓に入力する言葉です。「貯金 方法」「貯金 コツ」「貯金 平均」のように、2つ、3つの組み合わせで入力する人もいます。どんな言葉を調べたい人が多いのかがわかると、ニーズの高いテーマで記事を作ることができます。

キーワードを探す作業は、クライアント側で行っていたり、クライアントが外注するウェブマーケティング会社が担っていたりします。原稿の執筆依頼を受けるときは、こうしてすでにクライアントが選定したキーワードを与えられることが多く、ライター自身がキーワードを探す、選定することはそれほどありません。

ただ、なぜそのキーワードが選定されたのか、なぜそのキーワードで記事を作りたいのか、クライアントの意向を理解することは大切です。世の中で検索されているキーワードがどんなものか、どれくらい検索数があるのかなど、ウェブ記事のニーズを日頃から意識しておきましょう。

2.検索キーワードに込められたニーズの検討

ライティングをするときにより重要なのは、検索キーワードがどんな意味をもつのかを探ることです。これをできる限り正しく把握することで、ウェブでたどり着いた読者に満足度の高い記事を書くことができます。それは、検索エンジンでの評価と表示順位アップにもつながります。

誰でも、インターネットで検索するときには、必ず何かしらを「知りたい」と思っています。そして、疑問や悩みに関連するキーワードを、検索エンジンの検索窓に入力します。たとえば「貯金をしたいけれど、どんな方法ならうまく貯まるだろうか?」と思う人は、「貯金 方法」と入力するでしょう。「すぐに貯まる貯金の方法を知りたい」と思う人も、同じく「貯金 方法」と入力するかもしれません。

また、「私の貯金って、平均より多いのだろうか、少ないのだろうか?」「世の中の人はどれくらい貯めているんだろうか?」という疑問を抱いている人は「貯金 平均」と入力するかもしれません。

このように、検索キーワードには必ず、その人の知りたいことや解決したいことが込められています。そのニーズをキーワードから読み解き、その答えを記事の文章として返すことが、ウェブのライティングで最も求められることです。

自分が何かを知りたくて検索したとき、知りたいこととマッチする記事が検索結果に見つかったとき、そしてそのタイトルをクリックして読み「そう、それが知りたかった!」と疑問を解決できたときには、とてもすっきりしますよね。

この「すっきり」への導線を作ることが、ウェブライティングの使命だと思います。ライターとして仕事をするときは、単に与えられたキーワードを機械的に含めて文章を書くのではなく、その裏に隠されたニーズ、読者の疑問や悩みに思いを馳せることが大切です。

3.正確性と信頼性の高さ

もうひとつ大事なのが、正確性や信頼性です。マネー記事ではとりわけ重要です。

どんなに世の中で検索する人が多いテーマでも、検索する人のニーズがわかっても、その答えとして提供する記事の情報が間違っていては意味がありません。

特にマネー記事は、貯金、保険、公的保障制度、投資、家計管理、ライフプラン(人生設計)、税金、相続、不動産(住宅ローン、マイホーム購入など)など、読む人のお金や人生を左右するテーマを扱います。記事をきっかけに何かを買ったり、売ったり、手続きをすれば、ライターは間接的にその人の人生に影響を与えることになるわけです。

このためGoogleなど大手検索エンジン側も、「Your Money or Your Life(YMYL)」、つまりお金や生命(人生、健康)にかかわるウェブページに対してはシビアに品質評価をしているといわれています。内容が正確でない、信頼できない記事は、いくら検索キーワードにマッチするものでも、検索結果の上位には表示させません。

正確で信頼性の高い記事を書くのは、小手先のテクニックでは通用しません。どんなものごとでも、内容を深く理解し、正しく解釈し、適切な表現方法でわかりやすい文章にするには鍛錬が必要です。金融経済に関することは情報更新もひんぱんで、専門用語も少なくありませんから、日頃から知識のアップデートも重要です。それはテクニックというよりは、むしろ継続的に努力し続けるしかないことともいえます。

重要なのは読者に応えるテクニック

このように、良いマネー記事を書くには、ある程度のSEOの知識やテクニックが必要です。

ライティングを始めて間もない人には、検索順位や記事のPV数の向上を狙って、キーワードの選定や使用回数など、SEOテクニックを駆使することばかりに意識が向いている人を時折みかけます。

それは間違ってはいませんが、そればかり意識しすぎて、記事の内容というもっと重要な部分に抜けや漏れが生じるのは心配です。あるいは、情報としては間違っていないけれど、文章が読みにくい、一方通行な主張で読んでいてしっくり理解できない、どこか違和感があると感じる記事にもときどき出会います。短期的にはSEO上で有利だったとしても、記事を訪れた読者にとって役に立たないと判断されることが続けば、いずれ読まれなくなってしまうかもしれません。

Googleはかねてより、良質なサイト作りにはサイトを訪れるユーザーにとって信頼できる、安心できる情報を提供しているかを検索順位での評価対象としている旨を公表しています。ウェブサイトの運営者向けに発信されたこのアドバイスは、サイトのコンテンツである記事を執筆するライターも心得ておきたいものです。そしてその本質は、情報を得るために訪れる読者のニーズに寄り添い、適切に応えるべく改善し続けることが、どんなテクニックよりも重要であるということなのだと思います。

※参考:Googleウェブマスター向け公式ブログ

(文:マネーステップオフィス株式会社 加藤 梨里)

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【マネーライティング講座】専門分野なら執筆経験がなくても書ける?

金融・経済・マネー関連の記事や原稿執筆の案件には、書き手の要件に金融機関での勤務経験やファイナンシャルプランナーの資格を課しているものがあります。応募要件にこうした条件を設けていない案件に比べ原稿料相場が高く、条件に該当する人には好案件にみえます。

しかし、それだけで仕事を取れると思うのは早計です。原稿料をもらって書く時に求められるのは、専門知識だけではないからです。

専門知識がある=執筆のプロではない

記事を書くときには、そのジャンルに精通していることが不可欠です。個人のブログやSNSと違って、情報を発信することで読者から購読料を取るメディアは、間違ったことを書くわけにいきません。記事自体は無料でも、PV数が高く大多数の人に読まれるメディアなら、発信する情報が社会に与える影響力が大きいですし、発信者としての信用にも関わります。

ですから、内容が正しいことは大前提です。

なぜ新聞や雑誌には記者やライターがいるのか?

ならば正しい内容を書くためには、その道の専門家が書けば間違いないはずです。しかし実際は、メディアの記事の多くは記者やライターが書いています。

たとえば新聞では、新しい学術論文が発表された際にそれを紹介する記事を見かけます。内容は学術論文の抜粋が中心ですが、論文と全く同じ文章が使われることはまれです。書いているのはその研究をしている研究者自らではなく、新聞の記者やライターです。

研究者が論文を「書き」、それを記者が記事に「書く」。同じ内容なのになぜわざわざ情報源を創りだした研究者ではなく、記者が記事を書くのか?

それは、読者に伝わるように書く技術に長けているためです。

いくら正確な内容であっても、難しければ読者には理解してもらえません。読みにくい文章では伝わりません。記者やライターの人は、情報源(この例では論文)を読み、ときに取材を重ねて記事を書きます。その際には、論文に書かれている数々の結果のうち、日常生活からイメージしやすい事例を選んだり、平易な言葉に置き換えたりします。そして、情報を一般の人にわかりやすい文章に加工して発信します。

つまり、学術雑誌など一部を除いて、メディアに載る文章は、もともとの情報や専門知識が広く一般に理解されやすい言葉に翻訳されたものなわけです。

専門分野の原稿を書くには専門家役とライター役が必要

こうしてみると、専門知識があることと、それを一般に向けて伝えることは全く意味が違うことがわかります。

すなわち一般の読者に向けたメディアで専門分野の記事を書くには、
1)そのジャンルの専門知識=専門家が持っている知識や見聞
2)読者にわかりやすく書く技術=記者・ライター・編集者が持っている技術
の2つが必要です。

ただ、2)読者にわかりやすく書く技術には、記者・ライター・編集者と3つの職種が含まれています。厳密にいえばこれらの職種の人が持っている技術はそれぞれ違います。

編集体制の整ったメディアなら社内に編集者を置いており、原稿を公開できる記事に仕上げる作業は編集者が担います。また、金融・経済・マネー系のメディアでは取材をもとに書く記事よりも、ウェブなど一般に公開されている情報をもとに書く記事が主流です。専門家の人が本業の傍らで書く記事の多くは、新聞や雑誌の記者のように取材をして書くことはありません。ですから専門分野の記事を書く時は、一人で専門家役とライター役を兼務するイメージに近いと思います。

ライターに資格はないが、素人でもできるわけではない

税理士、会計士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家になるには、資格が必要です。これに対して記事を書くためには特別な資格はいりません。このため、書きさえすれば誰でも記事を書けると思う人もいます。しかし多くの専門家には「難しいこと」「専門的なこと」の知識は十分にあるものの、それを「よりわかりやすく」「書く」技術がすなわち備わっているわけではありません。

特に、不特定多数の人が読んで理解できる文章を書くのは意外と難しく、ある程度の技術と訓練を要します。

はじめから完璧な原稿を書かねばならないわけではありません。専門知識を盛り込めるというアドバンテージがある分、専門家ではないライターと比べて文章力が劣っていたとしても、多少は許容されるかもしれません。ただ、完成度の低い文章をわかりやすく編集するのは非常に手間がかかります。文字数や内容にもよりますが、編集にはたいてい数時間を要します。本業のライターほどではなくとも、書き手自身の文章力が高ければ、それだけ編集者には喜ばれます。すなわち、次の仕事や報酬アップも近づきます。

専門知識はいわば英語と同じです。小学校から英語が必修になり、就職ではTOEICのスコアが求められる今、英語「だけ」で勝負できる仕事はほとんどありません。それと同じように、専門知識さえあればあとは問われない仕事もありません。

メディアで求められる記事は多数の読者に読まれることを想定していますから、あまり専門的すぎる内容よりは、一般の日常生活に直結した題材が好まれます。となると、同じ内容について知っている専門家はいくらでもいます。まして、マネー系のジャンルには税理士、会計士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー、金融機関にお勤めの方など、あらゆる専門家が多数います。よほど特化した強みがあれば別ですが、広く一般で求められるテーマで書くなら、専門性の高さよりも文章力が求められるはずです。

専門家向けの執筆案件というと、専門家ならできると思うかもしれません。しかし実はそれ以上に、執筆スキルの高さが大事です。

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【マネーライティング講座】なぜ私の文章は伝わらないのか?わかりやすい文章への誤解とは

「あなたの文章の意味がよくわからない」と言われたことはありませんか? 業務上の文書に限らず、メールやSNS、手紙を含めると、私たちが文章を書く機会はたくさんあります。コミュニケーションを取るために不可欠な手段ですが、ちょっとした行き違いで相手に誤解を与えてしまったり、話が想定外の方向に進んでしまったりすることも。ブログやSNSでは炎上を招くこともあります。

なぜ自分の文章はうまく伝わらないのか? その原因には、「どんな文章ならわかりやすいのか」について正しく理解できていない可能性が挙げられます。わかりやすい文章とは何かについて、考えてみましょう。

「わかりやすい文章=簡単な文章」ではない

わかりやすい文章というと、簡単な文章を書けばよいと思う人がいるかもしれません。確かに簡単な内容は、難しい内容よりは理解しやすいはずです。しかし簡単な内容であっても、相手に正しく伝わらないこともあります。

むしろ簡単な内容ほど、すぐわかるだろうという思い込みで雑に書いてしまい、誤解を招きやすいとも思います。わかりやすく書くとは、簡単に書くことではなく、相手に伝わるように書くことです。

伝わらないのは相手の読解力が低いからではない

自分が書いた文章を読んだ相手に「何をいっているのかわからない」と言われると、「なんでわかってくれないの?」と思うのではないでしょうか。また「この人は読解力がないに違いない」とも思うかもしれません。時間をかけて書いた文章なら、なおさらです。

しかし多くの場合は、自分の書いた文章の方に問題がある、と思うべきです。

私自身も、推敲に推敲を重ねた記事を読んだ人からそんなコメントが寄せられ、相手のせいだと思ってしまったことがあります。でもしばらくして冷静になって読み直してみると、確かにわかりにくい。もっと丁寧に言葉を補うべきだったと思いました。

誰しも、自分が書いた文章は自分の頭で考えたことをアウトプットしているので、自分ではわかります。ですが読む人は、書いたときの書き手の頭の中のことなど知りません。書き手の頭の中の前提条件を知らなければ、わからなくて当然です。

もし伝わらなければ、自分に責任がある。相手の読解力を求めるのではなく、自分が伝え方を工夫すべきである。そんな謙虚な姿勢で自分の文章を見直すことが、文章力を上げる最強の近道だと私は思います。

そして謙虚さを意識して書くと、確実に「伝わらない!」は減ります。

自分の価値観と世界観の中にこもった文章では伝わらない

謙虚さというと自分がへりくだることをイメージするかもしれません。確かに上から目線の文章よりは、へりくだった方が好感度の高い文章になります。しかしへりくだりすぎるのも問題です。自分を卑下しすぎた文章は読んでいて心地よくありません。

たとえば「説明させていただきます」「お示しさせていただきます」「おすすめさせていただきます」など、書き手が読者の下にいると過度に強調する表現が目立つと、読み手はそればかりに意識が向いてしまい内容に集中できません。謙遜と謙虚は違います。書き手が単にへりくだるのではなく、読み手の目線と同じ高さに立つことが大切です。

むしろ、読み手の価値観や世界観の中に入って語ろうとするスタンスが、文章を書くうえでの「謙虚さ」だと思います。もちろん、他人の価値観や世界観を完璧に理解することなどできませんし、多数の人に読まれる文章を書くなら、すべての人の価値観に合わせることなど不可能です。ですから実際に相手の価値観・世界観を理解しているかどうかというよりは、理解しようと努めているかが、伝わりやすさには重要な気がします。

不思議なもので、この「理解しようと努めている姿勢」は、文章によく現れます。相手を理解しようとしていない文章は常に自分本位です。自分(書き手)の知っていることは相手も知っている、自分が語る言葉は相手も理解して当然、という前提で語られるのです。そしてその思い込みこそが、伝わらない最大の原因です。

わかりやすい文章は徹底的に相手目線の文章である

文章がわかりにくいと、自分が伝えたいことを自分の意図通りに相手に伝えることができません。正しく伝わらないどころか、相手に誤解を招いてトラブルのもとになることもあります。

メールやSNSのダイレクトメッセージなど、1対1や、リアルで付き合いのある特定の人の間だけでのトラブルなら、誤解を解くのはそれほど大変ではありません。会いに行く、あるいは電話をして説明すれば、わかってもらえるでしょう。しかし不特定多数に発信するブログやSNSでは炎上につながることもあります。わかりにくい文章が、自分のイメージや社会的地位を揺るがす火種になることもあるのです。

ただ、炎上する文章こそ、文章力よりも自分本位な姿勢が命取りになるように思います。ときどき有名人のブログなどが炎上するとき、はじめの炎上のきっかけこそちょっとした言葉の使い方の誤りであっても、その後に発信する釈明や謝罪が火に油を注いでしまうことがあります。その多くで、自分の価値観・世界観の中だけで語る姿勢が批判の対象になっているように感じます。

全く相手に誤解を与えず、完璧な文章を書くことなどできません。指摘を受けることは誰にでもありえます。それを回避するには、文章の書き方のテクニックも重要ではあるものの、それ以上に相手の世界に歩み寄る姿勢が大切ではないでしょうか。

自分の価値観・世界観の壁を超えて、相手の世界に入っていく。そうして徹底的に相手目線を意識することで、より相手に理解される文章に近づくはずです。

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