2023年度厚生年金保険・国民年金の収支決算が公表 歳入・歳出ともに減少

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厚生労働省は2024年8月2日、2023年度の厚生年金保険・国民年金の収支決算を公表しました。

厚生年金は、被保険者数と給与の増加などが収支に影響

会社員が保険組合などを通じて加入する厚生年金では、歳入が816億円、歳出が1兆7,544億円減少しました。

歳入面では、厚生年金の被保険者数の増加や平均標準報酬月額の増加により、保険料収入は増加しました。
標準報酬月額とは、毎月の給料や賞与などを基にした、年金保険料の算定に使われる区分です。給料や賞与の額が上がり区分が変更されると、年金保険料も上がっていく仕組みになっています。

日本では現在賃金引上げが推進されており、最低賃金の引上げが毎年行われています。また、厚生労働省の調査では2023年度中に賃金を引き上げした企業は89.1%に上っています。こうした動きから、保険料算定に用いられる平均標準報酬月額が上昇したことが、保険料収入の増加に寄与した可能性があります。

一方で、基礎年金の給付に充てられる基礎年金拠出金が減少したことなどから、結果として歳入全体は減少しました。

また歳出についても減少しました。厚生年金保険の保険給付費が増加した一方、基礎年金を確実に支給するために必要と見込まれる金額を繰り入れた結果、基礎年金拠出金が減少したことなどが影響しています。

国民年金は被保険者・年金受給者が減少 歳入・歳出減少の要因に

自営業やパート・アルバイト労働者などが加入する国民年金では、歳入が942億円、歳出が2,245億円減少しています。

歳入の減少では、被保険者数の減少などが影響しているとされています。
2016年10月以降、段階的に社会保険へ加入するための要件緩和(適用拡大)が段階的に行われています。2022年10月には勤め先が従業員数101人以上で要件を満たした場合には、社会保険に加入することとなります。これにより国民年金・国民健康保険から厚生年金・健康保険へと切り替える人などの影響により、被保険者数の減少につながっている可能性があります。

歳出では、年金受給者数の減少が要因であると指摘されています。

<出典URL>
厚生労働省「令和5年度『厚生年金保険・国民年金の収支決算の概要』を公表します」
厚生労働省「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」

(文:年永亜美/WEBサイトTwitter