【尾木ママ激怒】難関大学合格で100万円の鹿児島の高校がおかしすぎる件

Last Updated on 2014/11/26 by マネーステップオフィス編集部

鹿児島県の県立高校が、入学者を増やすために難関大学に合格すると100万円の奨励金を交付することになり、議論を呼んでいます。あの有名教育評論家の尾木ママが批判したことで、ネットを中心に議論は加熱中! ライフプランやお金の使い方からみても、どうもおかしいように思います。

鹿児島県立大口高校が難関大学に合格で100万円の賞金制度を導入

話題を呼んだのは、鹿児島県の県立高校である大口高等学校。本年度から、生徒が難関大学に合格すると、「奨励金」として現金が支給されることになりました。

もらえる金額は大学のレベルによって異なり、
・100万円もらえるのは、
(1)旧帝国大学(東京大学・九州大学等)クラスの大学とそれに準ずる学部(医学部医学科など)の難関国公立大学
(2)難関国公立大学(上記(1))に準ずる私立大学
  
・30万円もらえるのは、
(3)難関国公立大学(上記(1))以外の国公立大学
(4)国公立大学(上記(3))に準ずる私立大学

となっています。

この高校は、優秀な生徒が周辺の高校へ進学してしまうこともあり、長年定員割れに悩んできました。普通科の2014年度の出願者数は募集定員120名に対して71名、出願倍率は0.60だそうです。倍率は減少傾向にあり、事態を改善するために、大学への進学実績を上げようというのが今回の目的です。

高校の賞金制度はなにが問題なのか?

この決定を、有名な教育評論家である尾木直樹氏(尾木ママ)は痛烈に批判しました。

  難関大学や知名度の高い大学がそんなに価値あると信じているのかしら!?今時時代錯誤も甚だしい
優れた人材とは何か…全くわかっていない!!

呆れます!!

オギ☆ブロ

ネット上では尾木ママの投稿を受けて、議論が白熱しました。賛否両論あるようですが、税の配分、キャリアプランやライフプランの面から考えると、以下の点でやはり違和感があります。

■1.市民の税金が優秀な生徒だけに払われる不公平
奨励金は市の税金から払われることになっています。その総額は年間5,000万円。地域の優秀な生徒を育てる、という意味では良いかもしれませんが、「大学合格」という切り口だけで税金を投入するのは不自然といわざるをえません。

■2.選挙権もない高校生に市政を担わせる不公平
特定の高校生だけ(しかも県立高校に通う生徒に)を税金によってバックアップするのは、税の配分という意味でも不公平です。さらにいえば、この奨励金は、この高校の入学者数増加という市の思惑に高校生を巻き込んでいるわけです。選挙権もない高校生に、市政の片棒を担がせるような形になるのも問題です。

■3.学力が伴わない生徒のモチベーションが下がる恐れ
先生や学校の期待が特定の生徒だけに集まって、他の生徒に充分な指導が行き渡るのかどうか疑問です。公平に教育を提供すべき県立高校で、生徒のより分けがされる恐れがあります。難関大学を受験するには学力が伴わない生徒は「地域の役に立たない存在」にもなってしまいかねません。

今回の制度では、奨励金だけではなく、外部から講師を招き授業のレベルも上げると謳っています。とはいえ、授業や進路指導の中でも、難関大学を受験できそうな生徒だけに力が入る方向に傾くのではないでしょうか。となると、難関大学を受験できるレベルに満たない生徒は、ますますこの高校に行きたくなくなるでしょう。そのような環境に3年間もいれば、豊かな人生観や、社会やキャリアに対する広い視野が育ちようがありません。

■4.市から特定の私立大学への利益供与になる
奨励金は私立大学の合格も対象になっています。間接的には私立大学への受験、入学を市が税金を使って誘導していることになり、市から私立大学への利益供与ともいえます。

■5.教育者がライフプランを押しつける暴挙になりかねない
「難関大学だけに合格すること=成功」と言い切ってしまうかのような奨励金は、自由が保障されるべき生徒の進路選択、ひいてはキャリアプランやライフプランを恣意的に誘導することにもなりかねません。高校生に古き学歴社会への逆行を強要すれば、我々現役世代には想像もつかない新しい世界を創るかもしれない、生徒の無限大の可能性を潰してしまうおそれもあります。それは、現役世代を将来支えてくれるはずの貴重な人材を失うことにもなりかねないのです。

確かに、難関大学には優秀な人材が多いですし、そこから日本を担う人材が輩出されるのは間違いありません。しかし、それはあくまでも結果論です。優秀な人だからこそ、大学での学びや環境を最大限に生かし、社会を動かす力を養っていくことができるのです。そういう人はそもそも賞金がなくても難関大学に合格できるでしょうし、賞金目当てに難関大学を目指すような人が、社会人になって本当に能力が活かせるのかどうか、はなはだ疑問です。本人にモチベーションや能力がなければ、いくら学歴があってもなにもできません。

賞金などなくても、生徒の可能性は引き出せるはず

日頃、高校生にお金の授業をしている立場から言わせていただくと、高校生は人生で最もというほど感受性が高いです。精神面でもそうですが、情報を通して社会のメタメッセージを敏感に受け取り、素直に反応し、自分がどう生きていくべきか、それぞれに真剣に向き合っています。(もちろん、全員がというわけではありませんが)

教育に関わる大人がすべきことは、どんな生徒に対しても、自分がやりたいことをできる道筋をたてる手助けをすること、自分の道を探すモチベーションを高めること、先を見通す力を養うこと、お金のことも含め世の中のしくみを教えることだと考えます。

そうはいっても、理想を掲げるだけではうまくいかないのも現実です。生徒が集まらなければ学校は運営できませんから、良い授業もできません。学校は生徒ありきですから、生徒集めに奔走する先生方のご苦労は、筆舌に尽くしがたいものもあるのだろうと思います。

とはいえ、それこそ「生徒ありき」 です。学校の真の価値は、大学の合格者数よりも、合格した大学のランクよりも、いかに生徒にとって豊かな学びを得られるかどうかです。

本当に県立高校のレベルを上げ、受験生が入学したくなるような魅力的な高校にするならば、優秀な人材を都市部の難関大学に流出させるだけではなく、その後に活躍することや、それを地域に還元することも含めて奨励すべきです。

お金は人生を豊かにするひとつの道具にしか過ぎません。どうか、賞金のために人生を左右される高校生が出ないことを祈るばかりです。

  難関大合格で100万円支給の鹿児島県立大口高校、予備校連携も強化
大学進学奨励交付事業として、旧帝国大学クラスの大学とそれに準ずる学部(医学部医学科など)の難関国公立大学および私立大学合格者に奨励金を交付すると発表した鹿児島県立大口高校。生徒の入学を促す手法が議論されているが、予備校と連携した学習支援も興味深い。

鹿児島県立大口高校は、同県伊佐市大学進学奨励金交付対象基準策定委員会のもと、大学進学奨励交付事業のひとつとして旧帝大クラスの大学合格者に対し100万円の奨励金を交付すると発表。難関国公立大学以外の国公立大学およびそれに準ずる私立大学合格者にも30万円を支給するようだ。

奨励金を理由に優秀な生徒を集めようとする市の手法に、教育評論家の尾木ママこと尾木直樹氏がブログ内で「時代錯誤も甚だしい 優れた人材とは何か…全くわかっていない」とコメントしたことで議論が過熱している。

伊佐市が行う大口高校緊急支援策に関しては、奨励金以外の進学支援策にも注目すべきだ。大口高校入学者には、進学指導連携事業として、北九州予備校の講師による特別講義を月1回受講することが可能になるほか、土曜・日曜・祭日を利用した数学・英語の講義(90分x2コマ)を2学年にわったって受講することができる。同校は、加世田高校・川内高校・鹿屋高校など同様「進学指導重点支援校」に選ばれていることもあり、ベネッセによる進学支援も受けることができるという。

同市は10月の広報誌「いさ」にて「伊佐市の高校に行こう!」特集を掲載し、県立大口高等学校、伊佐農林高等学校、私立大口明光学園高等学校への入学を促している。 公立・私立問わず、生徒を市内の高校に進学させたいという市の試みが見て取れる。

進学先高校の公私問わず、質の高い教育が受けられる学習環境を整えたいと考える市の試みに反対する人は少ないだろう。その一方で、市が支援する大口高校普通科の2014年度の出願倍率は0.60、前年の0.77をも下回った。募集定員120名に対する出願者数71名の実績を今回の試みでどこまで回復できるか、注目される。

(2014年11月18日 リセマム)

参照先:鹿児島県立大口高等学校ホームページ

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