【マネーライティング講座】マネーの文章力を高めるために必要なスキルは何か?

マネー系のライティングをするには、どんな知識やスキルが必要でしょうか? 金融、経済に関する専門的な知識は必須です。文章力も必要です。

また、ウェブライティングの仕事をするときには、読まれる文章を書ける力を強く求められます。それは、マネー系のウェブライティングでも同じです。

マネーライティングで必要なのは共感力

では、それさえあれば良いマネー記事を書けるかというと、そうではない。というのが、10年以上マネーライティングを続けてきての実感です。何よりも大切なのは、生活やお金のことを知りたいと思っている読者への共感だと思います。

共感力とはなにか

共感力は、相手の気持ちを理解し、共に感じる力のことです。ライティングでの相手は読者です。マネー系の記事のように、専門的な情報を、それを知らない人が役立てることを目的に伝える文章では、読者の立場でものごとを捉え、読者と同じ思考回路で疑問や悩みへの解決を見いだそうとする姿勢で書くと伝わりやすくなります。

専門誌や学術誌など一部を除き、上から教えるスタンスよりは、一緒に考え、答えにたどり着けるよう伴走するスタンスで書くと、伝わる文章に仕上げやすいです。

「お得」は全読者にとってお得なのか

ところで、よく、マネー系の記事では「お得」「儲かる」のような表現を目にします。タイトルや見出しにこうした文言があるとキャッチーで、読みたくなります。ただ、むやみに使いすぎるのは考えものです。

マネー記事は、読者の生活や人生に関わるお金のことを扱います。記事を読んだ人が、記事をきっかけに何かを買うかもしれませんし、投資を始めるかもしれません。誤ったことを伝えれば、読者の人生に悪影響を与えてしまう恐れもあります。誤っていなくても、誤解を与える表現なら、読者にとっては誤った情報として伝わってしまいかねません。

扱うテーマや内容によっては、「絶対お得」「絶対に損」のような表現はできるだけ控えるべきです。

共感があれば、あおらなくても伝わる

このように、自分の文章が誰かの生活や人生の一コマに関わるという意識をもつと、読者の視点が見えやすくなります。抱いている不安や悩みも自分事としてイメージしやすくなります。すると、どんな文章構成がよいのか、どこまで専門用語をかみ砕くか、どんな具体例を出すかも決めやすくなります。

それは、一見するとおもしろみのない記事になってしまうかもしれません。しかし、真に読者に寄り添い、誠実に情報を伝えるうえでは、断定しない方が良いこともあります。内容によっては、ある人にとっては当てはまることでも、他の人にとっては当てはまらないかもしれない。不特定多数の読者が読む記事を書くときは、そんな配慮も必要です。

どこまで興味をもって読んでもらうか? そして、どこまで正しく伝えるか? そのバランスを見極めながら言葉を選び、読みやすい文章を組み立てていくスキルを磨くと、わかりやすくためになる文章に近づきます。

また、家計のこと、保険のこと、税金のことなど、お金に関わる記事はエンターテインメントではないことがほとんどです。しかし、おもしろくなくてもいいと思います。多くの読者はおもしろさを期待しているのではなく、生活を豊かにしたい、人生の備えをしたいといった真剣な思いを抱いて読んでいるからです。

その思いに誠実に答えることができていれば、おもしろみはなくても読んでもらう、役立ててもらうことは十分に可能です。マネー系の記事で伝わる文章とは、なによりも読者のことを考え、読者の疑問や悩みに寄り添い、その答えの一助を届けられる文章だと思います。

難しいことを簡単そうに伝えられると最強

ただ、おもしろくなくてもいいというのは、つまらなくてもいいということではありません。どんなに誠実に正確に伝えても、つまらなければ読者が飽きてしまい、最後まで読んでもらえません。最後まで読んでもらえなければ、知ってもらうべきことを適切に伝えられないまま終わってしまいます。

お金のことはただでさえ難しいと思っている人が多いですから、淡々と説明されただけでは理解できないことが多いです。自分にとって身近な事として関心を持ってもらい、自分の明日の生活に役立てたいと感じてもらえるように仕上げなければなりません。

このため、なかにはマンガやイラストを交え、エンターテインメント性を高めたマネー記事もあります。

しかし、もうひとつ誤解してはいけないのは、おもしろく伝えることと、いい加減に伝えることも全く違うということです。

おもしろくするのは、難しい内容をかみ砕いて説明するためであって、適当に理解できればいいということではありません。かみ砕いても、必ず押さえるべきポイントは外さずに、正確に理解してもらえる表現で伝えるべきです。

これは意外と難しいことです。専門用語を使わずに、専門的なことを説明するのは難しいのと同じです。

難しいことを、簡単なことのようにすらすらと頭に入る、わかりやすい文章で説明できたら、最強です。

伝わるマネーライティングのスキルはどうすれば身につくか?

どうすればそんな文章を書けるか? その絶対的な答えは、簡単には出せません。万人に100%の確率で絶対に効く薬がないのと同じように、必ず誰にでも伝わる文章を書ける方法もありません。これさえあればOK、というスキルも無いと思います。

でも、それを目指すことはできる。常に書き手が読者に思いを馳せ、模索し続けることで、近づいていくものだと考えています。

ときどき立ち止まって、自分の文章を読者目線で見つめ直す。10年書いても、20年書いても、まだゴールにはたどり着けないと感じています。書き続ける限り、その姿勢を続けていくことが大切ではないでしょうか。

(文:マネーステップオフィス株式会社 加藤 梨里)

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投稿者プロフィール

加藤梨里
加藤梨里マネーステップオフィス株式会社代表、FP
マネーステップオフィス株式会社代表、ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、金融商品上級フェアアドバイザー、健康経営エキスパートアドバイザー、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科特任助教(前)。 保険会社、信託銀行、ファイナンシャルプランナー会社を経て独立。専門は保険、ライフプラン、健康経営などに関する執筆、コンテンツ制作。大学では健康増進について研究活動を行っており、認知症予防、介護予防の観点からのライフプランの考え方、健康管理を兼ねた家計管理、健康経営に関わるコンサルティングも行う。